
間伐材丸太デッキは、10年も過ぎると朽ちてきます。
といって、その上を歩けないという状況に、すぐに、なるわけではありません。「入れ替えるか。何とかしたいなあ。」と思っているうちに、丸太の下に「土が誕生」してきました。
朽ちた丸太に、飛んできた落ち葉や砂埃などが重なって、又それが朽ちて土になるのです。土が誕生し、そこに草や木が芽を出し始めます。ほんの少しの土でも芽を出すものです。
うれしくなります。
そんなときに「鮭の遡上現象」というのを思い出しました。鮭は川の、わざわざきれいな上流に上ってゆき、産卵し、そこで寿命を全うし、そこで朽ちます。朽ちるということは川を汚すことになります。しかし、川を汚す鮭は、川に養分を与える鮭でもあるのです。水中や岸辺のいろいろな生き物をはぐくみ、下流に肥沃な大地をもたらします。これが本来自然の持っている法則であって、これは「改善する」などと考える対称にならない、「汚し」の回路といえるでしょう。
私たち人間も「地球のいきものたちとして」この「鮭の遡上現象」を、さまざまにやってきていたのですが、どうも近年「朽ちようとするものを、覆い隠してしまいたい」症候群になってしまっているように思えてきました。
その日からせっせと我が家も「鮭の遡上現象」を始めることにしました。4階建ての建物を遡上するのです。家の前の路地に迷惑を掛けていた落ち葉をせっせと掻き集めて、屋上に運びます。4階の自宅で発生した生ゴミを屋上に運びます。それでも足りないので買ってきた土を屋上に運びます。
そうして、「間伐材丸太デッキ」も、日に日に「間伐材丸太菜園」に姿を変えてゆきます。
図は隅田川の様子です。図の中に見える大きな帆を上げた船の中には、川を上る「おわい船」が含まれていると思われます。船は上流から江戸の町に野菜を運んできました。空船で帰ることはなく川を上る際には、市内の豊かな生活をしている人たちが生産する豊かな糞尿を載せていたということです。20年ほど前に足立の古老が、その帆をなびかせて並んで往来する船の様子が実に美しかったと教えてくれました。その「おわい」は上流の田畑に撒かれ豊かな実りに役立っていたのです。これも「鮭の遡上」に近い、人のやってきたことのひとつといえるでしょう。
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