
■古民家の何を保全するか:keyword■
江戸時代には、この建物は、大きなお屋敷の長屋門だったそうです。ところが、この長屋門のあたりを残し、その他の部分は、すべて、先先代が、手放さなければならなかった。そのころからしばらく、長屋門は、慎ましい、極めてささやかな住まいとして使われてきました。
その手放してしまった土地は、以降のひたすら働き続ける成果によって、買い戻され、買い戻したその土地は、かつて以上に活用され、現在の事業を実らせ、その中で、この茅葺の建物が事務所として生き続ける、という壮大なドラマを描くことになりました。
伝えたいのはそのドラマでしょう。
でも建物は、ただ保全しただけでは、それは遺跡であり、陳列物にもなってしまうような、造形物か彫刻としてしか生きられません。
あくまでも使われて、初めて建築になります。
使われている状態で保存することは、建築らしさにとって大切なことだということがわかります。
一度は、細々とした住まいにも使われたこの茅葺建物は、本来の長屋門の形式に戻され、かつ、地域の人に親しまれる、「緑の市場」の木陰、雨宿り、交流の場として再生するように、進められています。
これはエクセルギーハウス練馬の近況です。地域とともに検討してゆくこの建物は、実際に再生されるまでに、まだ1年以上かかります。
でも、この建物や地域の風景を大切にしようとする多くの人々にとっては、そのぐらいの年月は苦になりません。
そういう、地域にとって、大切なプログラムのお手伝いです。
写真は、茅葺屋根を下から見上げたところです。再現される長屋門では、見上げた時に、この屋根の下側を十分に味わえるように計画しています。
茅葺屋根では、外から眺めるのことも素敵ですが、この縄で綯われた天井を見上げることもそれに劣らず、素晴らしいものです。
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