


■庭の魅力、陽光の惠:keyword■
矢野周二氏は、海外から、我が家のシェフにと乞われて、あちこちでお仕事をされていた方です。20年ぐらい前、どちらの夫婦も若かったころ、ずいぶん創作のこと、暮らしかたのこと、夜を徹して話しました。建築と料理はどこかつながっているところがあるのでしょう。
それは楽しい時間でした。
私たち夫婦は、ここのところ、ほとんど、野菜を切ったまま、茹でたまま、といったものだけを、本当においしいと思っていただいていますが、当時はじつにいろいろなものを沢山食べました。
話が弾むと、毎回、「次回は」ということになり、おいしい料理やお菓子を作って、我が家に持ってきていただきました。こんな贅沢な話はありません。
そして、彼が味わって評価し、その背景にある時代性を語らずにはいられなくなる、厳選されたレストランに、あちこち連れて行っていただきました。
3年ぶりに彼のお店に行きました。国際基督教大学の近くにあります。落ち着いた緑の多い住宅地の中です。
それほど大きな敷地ではありませんが、お父さんから受け継いだその家の庭は、ちょっとした林になっています。
その林の木陰で食事ができるレストランです。
林の中に温室のような瀟洒な小屋を矢野氏自身で作り、その中でも食事ができるようにして、今のお店を始められたのが十数年まえになります。
まだまだ、木陰でくつろげる、そんなお店が少ないと思います。
お店は年々、少しずつ変ってきます。 往時語り合っていた時の矢野氏の感性が、料理に留まらず、人との関わり方、回りの環境に至るまで、どこにおいても感じられます。
久しぶりに、またいろいろ会話が弾みました。ここのところは、息子さんの友人の芸大や武蔵美の学生さんに自由にテラスやしつらえの演出を加えてもらっているとうかがいました。写真の、木漏れ日を蓄えて放さない貝のオブジェは、その一部です。
料理に使われる素材が育つ、庭の片隅の畑は、近所の、そういうことが好きで、得意な方に手入れしていただいているそうです。
普通の住宅地の、普通の家の、普通の庭の、普通の木漏れ日のなかで、普通に地域と関わって、お店を営んでおられます。
気取ることも、能書きを言うことも無く、散歩の途中で、木漏れ日のもとで、くつろぐことだけの充実。それが最高です。
そこには、ここでしか味わえないおいしい料理があります。
http://satmb.com/shinkoganei/tablier.html
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