


■10年保証、資材の生産・循環、建築の寿命、地域の風土、マダガスカル:keyword■
建築物や料理は、かつて、「商品」とは言われていませんでした。そのことが時代遅れで、そのことが悪いことであるとされ、国をあげて、それらを商品として扱うように必死になってきたのが、この数十年間の一側面であったようです。
保証制度の添加は、その締めくくりに近い現象といえそうです。住宅建築の10年保証が義務化されようとしています。「10年保証という商品の考え方は、11年たったら壊れてもよいということを意味する」ということは、先行して商品化された「食品」からも容易に想像できるでしょう。
食品という「商品」の問題点の解決策として、「食育」が盛んになっていることは、周知のことです。
木材の寿命からすれば、木造建築は軽く100年以上になります。 現存する萱葺き民家は、その年月を超えていることが多いようです。私たちも、長持ちする建築作りに、日ごろ努めています。
しかし、「長持ち」にどういう意味があるかを真剣に考えることはあまりなかった、と反省させられます。
ヨーロッパの代表的な建築である、石づくりは、数千年たった現在でも使用可能なほど、長持ちです。
江戸の町の木造はどうでしょう。東京に杉並区という地域があります。
かつて江戸の町の建築材料となる杉材「四谷丸太」の産地だった所だそうです。江戸ではほぼ20年に一度大火があり、そのたびに、木材が必要になったので、あらかじめ、こうした生産地を身近に用意しています。
江戸は、「町割り」という「道路割りと建て方のルール」が、ずっと保全され、したがって風景も保全されてきましたが、建物は、約20年に一度建て替わられていたことになります。
樹木が材木として、使えるようになるのに30年程度は必要です。大火の周期と、樹木の成長の周期がほとんど合致していたことが、江戸の建築の「20年の寿命」という仕組みを支えていたことになります。
では、南の国ではどうでしょう。バナナの葉で作られた家があります。毎年バナナの葉は建材に使えるまでに成長します。そこで毎年バナナの葉は葺き替えられるのです。建物はほとんど「1年の寿命」ということになります。葺き替え作業をすることが地元の重要な産業になっています。
石造りの多いヨーロッパの地域では、それに適した石が豊富に産出されます。変性しにくい、寿命の長い石が豊富にとれるから、寿命の長い建物が多いということなのです。
つまり、「長持ち」にかかわる、「資材の生産・循環」や「建築の寿命」は、地域ごとに異なり、地域の特産、地域の経済構造、地域の風土に調和して存在することが適切であるということになります。
「建築に適した石が、それほどたくさん産出されない日本において、石づくりのような寿命の長さを、無理して形成することはいかがなものでしょうか」と、教えてくれています。
1番上の写真は、マダガスカルのバナナの葉に近い建材で作られた家の様子です。下は、同じ地域にある、フランスでモダン建築を勉強してきた地元の建築家の家の食堂です、
実は、建物全体はモダンな鉄筋コンクリートで作られていますが、あまりの暑さに耐えきれず、後に食堂だけを昔の素材でその建物の外に付属させて建てた、その部分なのです。素材の使い方は建築家らしくモダンになっていますが、やはり無理をせずに地元の素材を使うことの方が、快適なのでした。
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